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第5話 それなら、僕と結婚しませんか

last update publish date: 2026-10-02 20:20:50

第5話 それなら、僕と結婚しませんか

「水瀬さん。それなら、僕と結婚しませんか」

 濡れた歩道の上で、神代蓮司はひどく落ち着いた声でそう言った。

 美緒はしばらく返事ができなかった。

 車道を走るタクシーのタイヤが雨水を跳ね、少し離れた交差点では歩行者用信号の電子音が鳴っている。仕事帰りらしい人々が二人の横を通り過ぎていく中、美緒だけがまるで別の時間に取り残されたようだった。

「……すみません」

 ようやく出たのは、そんな言葉だった。

 蓮司がわずかに眉を上げる。

「何に対する謝罪ですか?」

「たぶん、聞き間違えました」

「何と聞こえました?」

「僕と結婚しませんか、って」

「合っています」

「じゃあ、やっぱり私の頭がおかしくなったんだと思います」

「その可能性より、僕が本当にそう言った可能性を考えてもらえると助かります」

 蓮司の顔には冗談を言っている様子がない。

 美緒は思わず額へ手を当てた。

「ちょっと待ってください。本気なんですか?」

「本気です」

「でも私たち、今日初めて二人で食事したんですよね?」

「はい」

「私、昨日まで別の人と結婚するつもりだったんです」

「知っていま
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